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大阪高等裁判所 平成8年(ネ)1155号 判決 1997年6月24日

控訴人

松元智恵

右訴訟代理人弁護士

渡邊亘男

被控訴人

新日本証券株式会社

右代表者代表取締役

川口忠志

被控訴人

津田修

右両名訴訟代理人弁護士

伊丹浩

主文

一  原判決主文一項を次のとおり変更する。

1  被控訴人新日本証券株式会社は、控訴人に対し、金一八三八万六〇九五円及び内金一七一八万六〇九五円に対する平成二年九月二六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  控訴人の被控訴人新日本証券株式会社に対するその余の請求を棄却する。

二  控訴人の被控訴人津田修に対する控訴を棄却する。

三  訴訟費用は、控訴人と被控訴人新日本証券株式会社との間においては、これを八分し、その一を控訴人の、その余を同被控訴人の各負担とする。控訴人と被控訴人津田修との間においては、控訴費用は全部控訴人の負担とする。

四  この判決は、一項1に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  当事者の求める裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人新日本証券株式会社は、控訴人に対し、金二〇二九万五六六二円及び内金一九〇九万五六六二円に対する平成二年九月二六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  被控訴人津田修は、控訴人に対し、金五〇〇万円及びこれに対する平成七年六月六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

4  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

5  2項につき仮執行宣言。

二  被控訴人ら

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

第二  事案の概要

一  争いがない事実(ただし、2は証拠による認定)

1  被控訴人新日本証券株式会社(以下「被控訴人会社」という)は、証券業を営む株式会社である。

被控訴人津田修(以下「被控訴人津田」という)及び長澤宏光(以下「長澤」という)は、被控訴人会社の従業員である。

2  控訴人は、3の本件ワラント取引開始時に満六〇歳の老婦人で、老夫と共に年金生活をしていた者である(ただし、この事実は後記理由説示第一の一1(一)のとおり証拠による認定である)。

3  控訴人は、被控訴人会社との間で、原判決添付別紙ワラント取引一覧表記載の立石電機WR九三、東芝セラミックスWR九三、三越WR九三、住友不動産WR九三及び神戸製鋼WR九三(以下「本件ワラント」という)の取引をした者である。右ワラント取引一覧表記載のとおり、控訴人が本件ワラントの購入代金として支払った金額の合計は一九〇九万五六六二円である。

被控訴人会社の本件ワラント取引の担当者は長澤であった。

二  本件ワラントの詳細

本判決添付別紙ワラント明細一覧表関係部分記載のとおりである(甲四〇、甲四一の一ないし三、乙七の一ないし四、弁論の全趣旨)。

三  控訴人の被控訴人らに対する請求の概要

1  第一事件

控訴人が、被控訴人会社に対し、本件ワラント取引につき、担当者長澤が不法行為をしたとして、民法七一五条一項の使用者責任に基づく損害賠償請求をするものである。

2  第二事件

控訴人が、被控訴人津田に対し、同人が、第一事件の証人尋問期日において偽証をしたとして、不法行為に基づく損害賠償請求をするものである。

四  争点

1  長澤は、故意又は過失により、控訴人に対し、本件ワラントが転換社債又は投資信託であるかのように誤信させたか。

(一) 控訴人の主張

長澤は、本件ワラント取引に際し、故意又は過失により、本件ワラントがワラントである旨の説明を一切せず、転換社債又は投資信託であるもののように装うなどの違法な勧誘をした。このため、控訴人は、本件ワラントを転換社債又は投資信託であると誤信して取引した。

(二) 被控訴人会社の主張

控訴人の主張を否認する。

長澤は、控訴人に対し、本件ワラントが、転換社債や投資信託と異なる「ワラント」であることを十分に説明している。

2  適合性の原則違反

(一) 控訴人の主張

長澤が、控訴人に対し、本件ワラントの勧誘をすべきではなかったのに、故意又は過失により勧誘行為をした。すなわち、長澤の右勧誘行為は次の理由により適合性の原則に反する。

(1) 控訴人の投資知識や経験

控訴人は、中学卒業程度の理解力しかない。

控訴人には株式取引経験があるが、それは長期保有による資産増加の目的で行ったものである。これに対し、ワラント取引は、価格変動による利ざやの取得を目的とする短期取引であり、基本的に性質が異なる。

(2) 控訴人の投資目的

控訴人の投資目的は、老後の生活のための資金運用である。このため、控訴人は、本件ワラント取引以前において、被控訴人会社に対し、株式取引を一切しない意向を明確に表明している。

(3) 控訴人の資力

本件ワラント取引をした当時、控訴人夫婦の預貯金等は約二〇〇〇万円、証券が五〇〇〇万円であった。しかし、控訴人の定年後の収入は年金のみであったのであるから、二〇〇〇万円ものワラント取引は、老後の生活設計に重大な影響を及ぼすものである。

(二) 被控訴人会社の主張

控訴人の主張を争う。

控訴人は、被控訴人会社の担当者らから、ワラントの説明を受け、これを十分に理解していた。

また、控訴人は四〇年に及ぶ会社勤務により相当の社会経験を積んでいるし、昭和二七年ころからの長年に及ぶ証券投資経験を有している。

3  説明義務違反

(一) 控訴人の主張

長澤は、控訴人に本件ワラントの勧誘をした際、故意又は過失により、控訴人に対し、本件ワラントに関する説明義務を怠った。その説明義務違反の具体的内容は次のとおりである。

(1) 外貨建ワラント取引の勧誘をする際には、少なくとも次の事項の説明をすべきである。

イ ワラントの意義

ロ 権利行使価格、権利行使期間、権利行使株数の意義

ハ 外貨建ワラントの価格形成のしくみ

ニ 外貨建ワラントは証券会社との相対取引によって取り引きされること

ホ ワラントはハイリスクの商品であり、無価値になることもあること

(2) 控訴人は、前示(1)の義務に違反した。すなわち、被控訴人会社の担当者は、控訴人に対し、前示(1)の各事項の説明を、控訴人が理解できるような方法で、具体的かつ詳細にしたとはいえない。

(3) とくに本件ワラントのうち、立石電機WR九三を除く各ワラントは、いずれも控訴人が取引をした当時、株価が権利行使価格を大幅に下回っていた。このようなワラントの取引を勧誘するには、その危険性をより一層明確に説明すべきである。

(二) 被控訴人会社

(1) 被控訴人会社の担当者らは、控訴人に対し、前示(一)(1)の各事項を十分に説明している。

(2) 前示2(二)の控訴人の社会経験、投資歴からみて、右担当者らの説明に不十分な点はない。

4  被控訴人津田の偽証

(一) 控訴人の主張

被控訴人津田は、第一事件の平成七年六月五日の証人尋問期日において、証人として、昭和六二年一月一六日に控訴人宅を訪問してワラントに関する説明をした旨の虚偽の証言をした。

(二) 被控訴人津田の主張

控訴人の主張を否認する。

被控訴人津田は真実の証言をしたものである。

5  控訴人の損害

控訴人の損害は次のとおりである。

(一) 第一事件関係

(1) 代金相当損害金

一九〇九万五六六二円

控訴人は、被控訴人会社の従業員である長澤の不法行為により本件ワラント取引をした。このため、控訴人は、前示一2のとおり、合計一九〇九万五六六二円の代金の支払をして同額の損害を受けた。

(2) 弁護士費用一二〇万〇〇〇〇円

(二) 第二事件関係

(1) 慰藉料 一〇〇万〇〇〇〇円

(2) 第一事件につき、裁判所が被控訴人津田の証言により過失相殺をした場合の減額分の一部

四〇〇万〇〇〇〇円

6  控訴人は、以上の主張に基づき、被控訴人らに対し次のとおり請求する。

(一) 第一事件

控訴人は、被控訴人会社に対し、民法七一五条一項の使用者責任による損害賠償請求権に基づき、金二〇二九万五六六二円及び内金一九〇九万五六六二円に対する不法行為の日以降の日である平成二年九月二六日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(二) 第二事件

控訴人は、被控訴人津田に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、金五〇〇万円及びこれに対する不法行為の日の翌日である平成七年六月六日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

理由

第一  第一事件

一  事実認定

1  証拠(甲二四、甲四二、甲四三、乙四の一ないし一六、控訴人本人)に弁論の全趣旨を総合すると、次の事実を認めることができる。

(一) 控訴人の経歴

控訴人は、昭和二〇年から昭和六二年二月まで近鉄観光株式会社に事務員として勤務した経歴のある昭和二年二月二二日生まれの女性である。控訴人は、夫と二人暮らしであり、夫も昭和五九年に退職している。本件ワラント取引が行われた当時、控訴人夫婦は、従前からの蓄えと年金収入によって生計を立てていた(なお、住居は借地上の自己所有建物である)。

控訴人は、昭和二七年ころから株式の購入を始めた。もっとも、右購入は、大手企業の株式を長期保有する目的のもとに行われていたものである。

(二) 控訴人と被控訴人会社間の証券取引

控訴人と被控訴人会社との取引は昭和五三年ころから開始された。ところが、昭和六一年三月ころから控訴人を担当するようになった被控訴人会社の社員久保田が、短期間の株式取引を繰り返し、その結果相当額の損失が生じた。このため、控訴人は、一部の例外を除きほとんどの株式を売却し、転換社債にするとともに、被控訴人会社に抗議して、昭和六一年九月から担当者を変えてもらった。新担当者は被控訴人津田となった。

(三) 被控訴人津田担当当時の取引

控訴人は、被控訴人津田に対し、久保田が担当していた際の経験から、今後株式の取引は一切しないよう念を押して確認した。

被控訴人津田は、控訴人からの右のような要望があったため、控訴人に対し、投資信託や転換社債を中心とした取引を勧めた。このため、控訴人の行った証券取引は、後記2のワラント取引を除き、投資信託や転換社債の売り買いである。株式取引は一切されていない。

(四) 長澤担当当時の取引

平成元年二月に被控訴人津田が転勤し、同年四月から長澤が新担当者となった。

控訴人は、長澤に対しても、被控訴人津田に告げたと同様、久保田が担当していた際の経験から、今後株式の取引は一切しないよう念を押して確認した。また、控訴人の証券取引の目的が老後の蓄えであることも伝えた。

長澤は、控訴人に対し、被控訴人津田と同様、投資信託や転換社債を中心とした取引を勧めた。また、長澤は、控訴人に対し、米国債の購入も勧めた。このため、控訴人の行った証券取引は、後記2のワラント取引を除き、投資信託、転換社債や右米国債の売り買いである。株式取引は一切されていない。

控訴人が平成二年四月一九日に購入した右米国債(代金一九一四万円)は、その後急落した。このため、控訴人は同年九月一四日売却せざるを得なくなった(代金一三九〇万八三八七円)。右取引による控訴人の損失は、五二三万一六一三円であった。

2  ワラント取引について

(一) 被控訴人津田による勧誘について

(1) 控訴人は、本件ワラント購入前の昭和六二年一二月一七日に井関農機WR九一(代金一〇五万八六〇〇円)、同月二一日に小野薬品WR九二(代金一五一万九二〇〇円)をそれぞれ購入している(原判決添付別紙ワラント取引一覧表参照)(乙四の三)。

もっとも、控訴人は、右各ワラントを、転換社債や投資信託のような証券であるものと誤信していたと主張し、その旨供述する。確かに、後記のとおり、控訴人がワラントの意義を正確に理解していたものではない。すなわち、証拠(控訴人本人)によると、被控訴人津田の説明不足により、控訴人は、ワラントと転換社債とを同趣旨の証券であると誤信していた節がある。しかし、そうであるとしても、控訴人の右誤信によって、直ちに右各ワラント取引が不成立であるとか、同取引が無効であるとはいえず、錯誤等その旨の主張もない。

(2) 被控訴人津田は、控訴人に対し、ワラントの意義、権利行使期間、元金の保証がないこと、ハイリスク・ハイリターンであること、為替リスクがあることを説明したと供述する。しかし、被控訴人津田の右供述はにわかに採用できない。その理由は次のとおりである。

イ 前示1のとおり、そもそも被控訴人津田が控訴人を担当するようになったのは、被控訴人津田の前任者久保田が、短期間に株式取引を集中して行った結果、相当の損失が生じたためである。すなわち、控訴人はこれに懲りて、今後一切株式取引のような危険な取引をしないことを決意したのである。さらに、控訴人は、株式取引のような危険を伴う取引は一切しないと被控訴人津田に対して明言している。そうしたなかで、もし、被控訴人津田が、ワラントの意義やハイリスク・ハイリターンであること等、ワラントの危険性を適切に説明していたならば、控訴人が、ワラントの取引を承諾する筈がないのである。ワラント取引をする特別の事情は容易に想定し難い。

ロ また、被控訴人津田は、右各ワラントのそれぞれについて、勧誘の都度、ワラントの意義等を繰り返し同じように説明した趣旨の供述をしている。しかし、昭和六二年一二月一六日に控訴人宅に訪問して三〇分もかけてワラントの意義等について説明したとしながら(被控訴人津田本人)、そのわずか数日後である昭和六二年一二月二一日ころに再度同じような説明をしたというのも甚だ不自然である。

さらに、被控訴人津田は、当時は説明書、パンフレットもなく、メモ書きをすることもなく、口頭で説明したと供述している。しかし、いくら控訴人が従前から株式取引、投資信託、転換社債の取引をしていたとしても、ワラントの意義、権利行使期間、元金の保証がないこと、ハイリスク・ハイリターンであること、為替リスクがあることなどを、口頭による説明でたやすく理解することは不可能に近い。被控訴人津田は、同被控訴人の説明に対して控訴人が理解して反応していたなどとも供述するが、にわかに信用できない。

以上のとおり、被控訴人津田の前示供述は、その供述内容からも、前示一1冒頭掲記の各証拠、弁論の全趣旨に照らし、たやすく信用できない。

(二) 長澤による勧誘について

(1) 控訴人は、次のとおりワラントを買入れている(原判決添付別紙ワラント取引一覧表参照)(乙四の八ないし一三)。

イ 本件ワラント購入前の買入

①平成元年七月二五日に三越WR九三(代金四二六万円)、②同年八月一〇日に東急車輌WR九三(代金一五五万九二五〇円)、③同年九月一三日に学研WR九三(代金二六〇万五七〇〇円)、④同月一八日に南海電鉄WR九三(代金五九九万八三〇〇円)、⑤同月二一日に日本油脂WR九三(代金五七三万五四〇〇円)、⑥同年一〇月六日に富士フィルムWR九三(代金六一九万二二二五円)。

ロ 本件ワラントの買入

⑦同月九日に立石電機WR九三(代金五六〇万七〇二五円)、⑧平成二年九月一四日に東芝セラミックスWR九三(代金三九二万四三七五円)、⑨同日三越WR九三(代金六八二万五〇〇〇円)、⑩同月一七日に住友不動産WR九三(代金一四九万〇九六二円)、⑪同月一九日に神戸製鋼WR九三(代金一二四万八三〇〇円)。

もっとも、控訴人は、右各ワラントを、前示(一)(1)と同様に、転換社債や投資信託のような証券であると誤信していたと主張し、その旨供述する。確かに、後記のとおり、控訴人がワラントの意義を正確に理解していたとすることはできない。すなわち、証拠(控訴人本人)によると、被控訴人津田の説明不足により、控訴人は、ワラントと転換社債とを同趣旨の証券であると誤信していた節が窺われる。しかし、そうであるとしても、前示(一)(1)と同様、控訴人の右誤信によって、直ちに右各ワラント取引が不成立であるとか、同取引が無効であるとはいえない。

また、後記のとおり、控訴人は、被控訴人会社の担当者の説明義務違反により、ワラントに関する理解が十分ではなく、ワラント取引をする明確な認識があったものではない。しかし、長澤が、控訴人に対し、本件ワラントを転換社債又は投資信託であるかのように誤解させるような積極的な言動をしたとまではいえない。むしろ、証拠(証人長澤)によると、控訴人は、少なくとも長澤が告げた右各銘柄の証券取引であるとは理解していたものと推測できないでもない。

そうであるとすると、長澤が、故意又は過失により、控訴人に対し、本件ワラントを含む右各ワラントが転換社債又は投資信託であるかのように装い、その旨誤信させたとまではいえない。争点1に関する控訴人の主張は理由がない。

(2) 長澤は、控訴人に対し、ワラントの意義、ハイリスク・ハイリターンであること、行使期限が到来すると無価値になることを説明したと供述し、当審証人永野法義も一部これに副う供述をしている。しかし、右長澤、永野の右供述はにわかに採用できない。その理由は次のとおりである。

イ 前示1のとおり、控訴人は長澤の二代前の担当者が行った株式取引に懲りて、今後一切株式取引のような危険な取引をしないことを決意した。このため、控訴人は、長澤の前任者被控訴人津田に告げたのと同様に、長澤に対しても、重ねて株式取引のような危険を伴う取引は一切しないと明言している。

また、長澤は、控訴人に対して、担当替えになった当時やその後に、株式取引の勧誘をして断られたとも供述している。

そうであるとすると、長澤が、ワラントの意義やハイリスク・ハイリターンであること、行使期限が到来すると無価値になること等、ワラントの危険性を適切に説明していたならば、前同様、控訴人が、ワラントの取引を承諾する筈がないのである。

ロ 長澤は、次のように供述する。外貨建ワラント取引説明書(乙二の一)を、平成元年七月二〇日にワラントの説明をした際に使用し、控訴人に対して交付した。この説明書(乙二の一)の内容を確認してもらった上、控訴人から確認書(乙二の二)の送付を受けた。右確認書の作成は、本来三越WR九三の買付の時(平成元年七月二五日)に行われるべきであるが、失念していたため、東急車輌WR九三の買付の際に送付を受けた。このようにいう。

しかし、長澤の右供述に対し、控訴人は、次のように供述している。控訴人は、外貨建ワラント取引説明書を一切見たことがない。確認書(乙二の二)の住所、氏名、押印欄はいずれも控訴人によるものであるが、日付欄(平成一年八月一〇日と記載されている)の記載をした覚えはない。このように供述する。

そして、長澤の右供述は、平成元年七月二〇日に右説明書を交付して説明した点につき裏付証拠が十分でなく、右控訴人の供述、弁論の全趣旨に照らしにわかに採用できない。また、そもそも右長澤のいう説明自体がワラントの一般的説明をいうものであって、個々のワラント取引の具体的説明を欠くものである。

ハ 長澤は、控訴人に対して、ワラント取引に先立ってワラントの説明をした際、控訴人が、黙って聞いているだけで、とくに質問はなかったなどと供述している。すなわち、長澤の供述によれば、同人は、ワラントは値動きが非常に激しく、値上がりして利益が出たら直ちに売却するという趣旨の話しをしたし、さらに、ワラントは株式よりリスクがあるという話しもしたというのである。

しかし、もし長澤が控訴人に対して右のような説明をしたというのであるならば、控訴人は、ワラント取引が、短期取引で利益取得をねらうものであり、株式取引以上にリスクを伴うことを理解しえたはずである。そして、そうであるならば、ワラント取引とは、控訴人にとって、再三被控訴人会社やその担当者らに対して、勧誘することを禁止した株式取引以上に、受け入れることができない危険なものであることが分かった筈である。そうであるのに、これに対して、控訴人がただ黙って聞いているだけで、何も質問をしないなどということは到底考えられない。まして、その後に長澤の勧誘に対してワラント取引を承諾することは到底考えられないところである。

ニ 前示イないしハの事情を考え併せると、長澤の前示供述(長澤が、控訴人に対し、ワラントの意義、ハイリスク・ハイリターンであること、行使期限が到来すると無価値になることを説明したとか、外貨建ワラント取引説明書(乙二の一)を使用して、その内容を説明したなどという供述)は、にわかに採用することができない。

なお、当審証人永野法義の証言は、以上のほか、それ自体抽象的で前後矛盾するところがあり到底信用できない。

二  長澤の本件ワラント取引勧誘行為の違法性(争点2、3)

1  ワラント取引勧誘行為の違法性の判断基準

(一)  ワラントとは、一定の期間内(行使期間)に一定の価格(行使価格)で一定の数量(行使株数)の新株を引き受ける権利を表章した証券である(新株引受権証券)。ワラントは、株式に直接投資するより少額の資金で、より効率の良い投資収益を得ることを可能にする。

しかし、一方において、ワラントには行使期間が定められているため、その行使期限が到来することにより無価値となる。それのみならず、ワラント価格は、行使期間内であっても、通常は行使期限が近づくことにより減少する。権利行使価格が株価水準を上回っておれば、当然ワラント価格はゼロに近づいていく。

また、ワラント価格は、引受対象株式の価格と比べて、その変動の度合いが著しい。しかも、ワラント価格の形成のしくみは複雑であり、一般の投資家が、その変動要因を的確に分析して予測をたてるのは至難の業である。

さらに、ワラントは、一定の価格で新株を引き受ける権利であり、ワラントを保有することにより配当や利益収入がえられるものではない。すなわち、ワラントの有する価値は、もともと一定の価格で新株を引き受ける権利の対価であるから、もっぱら株価の変動に対する予測によって左右される。したがって、株価の変動に対する予測を誤れば、ワラント価格が低迷し、売却処分することもできず、それによって被る損失は決定的なものとなる。

(二)(1)  ワラント取引の勧誘をする場合、ワラントの意義(権利行使価格、行使株数、権利行使期間)及びワラント価格形成のしくみについて適切な説明をすることが最低限必要である。しかし、右説明をすればそれで十分であるわけではない。

すなわち、前示(一)のとおり、ワラントは場合によっては紙屑同然となるもので、一般の投資家にとって、その危険性はあまりにも重大である。とくに、ワラントの市場価格は、引受対象株式の価格の将来的動向に対する見込みによって大きく変動する。その変動率は株価変動率より著しく大きくその値動きに比べて数倍を越えて上下することがある(いわゆるギアリング効果)。このため、右株価の動向を見誤ることは、投資資金を喪失することに直結する。したがって、ワラントに対する投資をするには、ワラントの価格を左右する株価の動向、経済情勢に関して、時々刻々と変化する情報を、常時収集し、その的確な分析と予測が必要である。そして、このようなことは、一般の投資家にとって通常著しく困難なことである。

(2)  以上のような観点からみるならば、証券会社の担当者が、一般投資家に対して、ワラント取引の勧誘をする場合には、その投資効率の面のみを強調するべきではなく、それに必然的に伴う重大な危険性をより十分に説明すべきである。それも、単にハイリスクであるなどという抽象的な説明では不十分である。当該一般投資家の経歴、証券取引に対する従前の知識経験などに照らし、当該一般投資家が容易に理解できる方法により、ハイリスクであるという意味を具体的に説明すべきである。

そうであるから、ワラント取引に関する十分な知識があり、価格変動要因に関する情報収集能力も備えた投資家に対しては、証券会社の担当者の説明義務は例外的にある程度軽減される。しかし、反対に、右のような知識がないとか情報収集能力を備えていない一般投資家に対しては、そもそもワラント取引の勧誘をすべきではない。不十分ながらも右のような知識や情報収集能力を有する一般投資家に対しては、ワラント取引の勧誘をすること自体は許される場合もあるかもしれない。しかし、その場合には、ハイリスクの意味を、容易に理解できる手段によって、個別的、具体的に懇切丁寧に説明すべきである。

(3)  したがって、一般投資家に対しては説明すべき事項は、最終的には、当該一般投資家それぞれについて、個別的に判断されるべきことがらである。しかし、そうであるとしても、ワラント勧誘時の現実の株価と権利行使価格との関係や、その将来的動向によるワラント価格の変動のしくみを個別的、具体的に説明することは不可欠であるというべきである。

とくに、勧誘時点で株価が権利行使価格を下回っているような場合は、将来株価が相当の率で上昇し、権利行使価格を上回る事態が到来するとのそれ相当の蓋然性がなければ、当該ワラントに対する投資は無意味であり、投資資金全部を失うおそれが強い。そうであるから、そもそも右のようなワラントを一般投資家に勧誘することは特段の事情でもない限り、不適切なものであるといわざるをえない。そして、何らかの特段の事情により勧誘をする場合には、一般投資家に対し、当該銘柄について、具体的に権利行使価格と権利行使期間を明示して、現在の株価水準との関係を明らかにした上で、今後の株価が相当の率で上昇したり、権利行使価格を上回ると考える根拠とその確度を、客観的な情報に基づいて、個別的、具体的に懇切丁寧に説明すべきである。

また、ワラント勧誘時に、株価が権利行使価格を上回っているとしても、ワラント価格は、株価の変動が増幅するに即応して大きく変動するのであるから、株価が下降傾向になれば、著しいワラント価格の下落が生じかねないことをも具体的に十分に説明すべきである。

2  被控訴人会社担当者の控訴人に対する説明義務違反

(一) 前示のとおり、控訴人は、約四〇年間観光会社に事務員として勤務した経歴をもつ女性である。そして、控訴人は、昭和二七年から株式取引をしていた。

しかし、控訴人の右株式取引は、大手企業の株式を長期利殖を目的として地道に買い増しをするという形態のものである。そうであるから、右のような株式取引をしていたからといって、控訴人が証券取引について十分な経験があるとはいえない。

また、控訴人は、右のとおり、長期間会社勤務している。しかし、右のような社会経験を有するからといって、直ちに、控訴人にワラントのような証券取引をする適格性があるとはいえない。

前示のとおり、控訴人と被控訴人会社との証券取引は、投資信託、転換社債がほとんどである。それのみならず、控訴人は、被控訴人会社の担当者が短期間に株式取引を集中して繰り返し行ったことに対して非常な危険を感じ、それ以来株式取引のような危険な取引をしないことを決意していたのである。

さらに、前示のとおり、控訴人は、夫と二人暮らしであり、夫も昭和五九年に退職している。本件ワラント取引が行われた当時、控訴人夫婦は、従前からの蓄えと年金収入によって生計を立てており、控訴人の証券取引の目的は、老後の蓄えを確保することにあった。

(二) 被控訴人津田は、少なくとも控訴人の証券取引の目的、経験などからして、控訴人が投機性の強い証券取引を望んでいないし、またそのような取引をする適合性を有していないことを知ることができた。そのうえ、前示のように株式取引は一切しないよう念を押されていた。以上の顧客である控訴人の意向、財産状態、投資経験などに照らし、控訴人は前示のとおり危険なワラント取引に適合しているとはいえず、そもそも適合性の原則に照らしワラント取引を勧誘すべきでなかったというべきである。そうであるのに、被控訴人津田は、前示のとおり、控訴人に対し、ワラント取引を勧誘し、しかもその際、ワラント取引の危険性について具体的に説明していない。それのみならず、被控訴人津田は、控訴人に対し、ワラントの意義(権利行使価格、行使株数、権利行使期間)及びワラント価格形成のしくみについてすら、ほとんど説明をした形跡がないのである。

(三) 長澤も、被控訴人津田と同様に、少なくとも控訴人が、前示のとおりその証券取引の目的、経験などからして、投機性の強い証券取引を望んでいないし、またそのような取引をする適合性を有していないことを容易に知ることができた。また、控訴人から株式取引は一切しないよう念を押されていた。そうであるのに、長澤は、前示のとおり、控訴人に対し、ワラント取引を勧誘し、しかもその際、ワラント取引の危険性について具体的に説明していない。それのみならず、長澤は、控訴人に対し、被控訴人津田と同様に、ワラントの意義(権利行使価格、行使株式、権利行使期間)及びワラント価格形成のしくみについてすら、ほとんど説明をした形跡がないのである。

しかも、とりわけ、本件ワラントのうち、立石電機WR九三を除く各ワラントは、いずれも長澤が控訴人に勧誘した当時、左記の通りその株価が権利行使価格を大幅に下回っていたものである(甲四〇、甲四一の一ないし三、甲四六の一、甲四六の八ないし一〇、弁論の全趣旨)。そのうえ、権利行使期間も三年前後(長いものでも三年三月弱)である。

(1) 東芝セラミックWR九三

権利行使価格 一三九四円

購入時株価 八八五円

行使期限

平成五年一一月一八日(約定日平成二年九月一四日)

(2) 三越WR九三

権利行使価格 二四九一円

購入時の株価 一三〇〇円

行使期限

平成五年六月一日(約定日平成二年九月一四日)

(3) 住友不動産WR九三

権利行使価格 二五四二円

購入時の株価 一一七〇円

行使期限

平成五年一二月九日(約定日平成二年九月一七日)

(4) 神戸製鋼WR九三

権利行使価格 八四八円三〇銭

購入時の株価 五三五円

行使期限

平成五年六月一五日(約定日平成二年九月一九日)

そうであるとすると、このような損失の危険性の極めて強いワラントを、危険性はもとよりワラントの意義や価格形成のしくみすら十分に説明しないで勧誘した行為の違法性は極めて強いものといわざるをえない。なお、本件ワラントのうちの三越WR九三は、長澤の勧誘により控訴人が平成元年七月二五日に購入し、その後同年八月三一日に売却したのと同銘柄のものである(その際控訴人は二四万五〇一四円の収益を得た)。三越WR九三は、右同日の売却時以来大幅に下落していたし、株価が権利行使期間内に九割以上も上昇して権利行使価格以上に回復する可能性があったと認めるに足る証拠はないのであるから、同ワラントの購入の勧誘をすることが不適切であることは明らかである。このような勧誘をした行為の違法性は欺罔行為にも比肩すべきものであるといわざるをえない。

(四) もっとも、控訴人は、本件ワラントを含む被控訴人会社との証券取引の明細が相違ない旨の回答書を、その都度作成して被控訴人会社に送付している。

しかし、前示のとおり、被控訴人津田や長澤のワラントについての説明は極めて不十分であった。また控訴人の証券取引に対する経験や情報収集能力も前示の程度のものにすぎない。そうであるから、控訴人が、右明細書の記載中に本件ワラントを含む各ワラントの銘柄の表示があるからといって、控訴人が、これをみて自らの責任と判断において、ワラントの取引であることを認識して危険を回避する措置をとるべきであったなどとはいえない。

また、証拠(甲二号証の各枝番)によれば、「お取引明細書」には、ワラントにつき「WR」という表示や「外国債権」などという表示がされている。しかし、被控訴人会社の担当者のワラントに関する説明が右のとおり極めて不十分であった以上、右の表示があるからといって、控訴人がワラント取引を十分理解し得たとはいえない。なお、「お取引明細書」には、ワラントの一部につき、「行使最終日」の記載が付されている。しかし、これも、被控訴人会社の担当者による適切な説明があってこそ、控訴人がその意味を理解し、投資判断の資料となりうるものである。本件では、前示のとおり、控訴人は、右のような説明を受けていない。そうである以上、控訴人の前示証券取引に対する知識、投資経験、社会経験を併せ考えると、控訴人が、右記載についてもこれを理解することができたとはいえない。

(五) 前示(一)ないし(四)をまとめると次のとおりである。

(1)  長澤は、本件ワラント取引を勧誘するに際して、ワラントの危険性について説明義務を尽くしていない。

イ  そもそも本件ワラントは、控訴人の証券取引に対する意向、投資目的、知識、投資経験、社会経験に照らし、適合性に欠け、そもそも勧誘すること自体許されないものである。

ロ  本件ワラントのうち、立石電機WR九三を除く各ワラントは、そもそも控訴人に勧誘すること自体が著しく不適切な株価が権利行使価格を切るマイナスパリティ(マイナス理論価格)の銘柄である。前示のようなマイナスパリティのワラントを一般投資家である控訴人に対し、しかもその意向に反し、その危険性について説明義務を尽くさないまま勧誘したもので、いわゆる客殺しと同然のことが行われたともいえるのである。

ハ  以上のとおりであるのに、長澤は、控訴人に対し、本件ワラントの取引を勧誘し、しかもその危険性について十分な説明をしていない。

長澤には、この点で右勧誘の際の説明義務違反がある。

(2)  なお、長澤の前任者である被控訴人津田も、長澤と同様に、本件ワラント購入前のワラント取引にあたり、ワラントの危険性について説明義務を尽くしていない。

(六)  以上によれば、長澤の控訴人に対する本件ワラントの勧誘行為は、説明義務に違反する違法行為であることが明らかである。また、以上によれば、右違法行為につき、少なくとも長澤の過失が認められる。

したがって、被控訴人会社は、証券業務という事業のために長澤を使用する者であり、被用者である長澤がその事業を執行するにつき、控訴人に加えた後記損害を、民法七一五条一項に基づき賠償する責任がある。

三  損害

前示第二の一2のとおり、控訴人が本件ワラントの購入代金として支払った金額の合計は一九〇九万五六六二円である。

そして、前示事実欄第二の二によれば、本件ワラントはいずれも権利行使期間を経過し、無価値となったことが明らかである。

以上によれば、控訴人は右代金額相当の損害を被った。

四  過失相殺

1  前示のとおり、控訴人は、長澤の説明義務違反の不法行為により、前示三記載の損害を被った。そして、前示のとおり、長澤の右説明義務違反は、その違法性の程度が強い。また、長澤が説明義務を尽くしていれば、控訴人が本件ワラント取引をして損害を被るという事態を避けることができたとも考えられる。

他方、控訴人は、ワラントより安全性が高いとはいえ、元本保証のない投資信託や、為替リスクのある外国債取引をしていた。控訴人は、本件ワラントも右のような取引と同種のものと考えて、勧誘に応じたものと推測される。そうであるとすると、控訴人は、本件ワラント取引によりある程度の損失を被るおそれがあることを予測すべきものであったともいえる。

また、前示のとおり危険であることを理由に株式取引を厳禁していたのであるから、ワラントについても、被控訴人の担当者以外からも情報を収集し、その危険性を察知して自らを守るべきであったといわなければならない。そうであるのに、控訴人は当初ワラント取引から多少の利益を得たことに気をとられて転換社債などと同様の確実なものと思い込んで取引を続けた点に過失がある。

したがって、控訴人には、本件ワラントの購入代金相当の損害の発生について、一定割合の過失があったことは否定できない。

そこで、長澤の説明義務違反の程度等本件に顕れた一切の事情を斟酌すると、控訴人の過失割合を一割とするのが相当である。

2  前示三の損害額から、右一割の過失割合を控除すると、一七一八万六〇九五円となる。

五  弁護士費用

第一事件に関する控訴人の請求認容額、その他本件に顕れた一切の事情を斟酌すると、長澤の前示不法行為と相当因果関係にある弁護士費用は一二〇万円をもって相当と認める。

六  第一事件についてのまとめ

以上のとおり、控訴人の、被控訴人会社に対する、民法七一五条一項に基づく損害賠償請求は、一八三八万六〇九五円(前示四2の一七一八万六〇九五円と前示五の一二〇万円の合計)及び内金一七一八万六〇九五円に対する不法行為の日以後の日である平成二年九月二六日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を求める限度で理由がある。

第二  第二事件について

一  被控訴人津田の証人尋問における証言(昭和六二年一二月一六日に控訴人宅を訪問してワラントに関する説明をしたとするもの)が採用できないことは前示認定のとおりである(第一の一2(一)(2)ロ―本判決二一ないし二三頁参照)。

右前示認定の事実、同所冒頭挙示の各証拠、とくに控訴人本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によると、被控訴人津田において自らの記憶に反し、昭和六二年一二月一六日に控訴人宅を訪問してワラントの説明を三〇分もかけて説明したと証言したものと認められる。

ところで、法廷における偽証を違法とする規範(刑法一六九条)は、直接には裁判所の行う国家裁判権の適正な運用という国家利益を保護することを目的としたもので、その侵害行為の禁圧が保護範囲ないし射程距離である。これが直ちに訴訟当事者の私法上の権利を保護するものではなく、これを害する違法行為になるものではない。

控訴人が右偽証により名誉等の人格権を侵害されたとの主張、立証はなく、せいぜい控訴人の主張に副う証言に対する期待が裏切られたことが認められるのみである。

この期待は、偽証を違法行為とする規範の保護範囲に属さず、損害賠償法上の違法性を認めるに足りる侵害利益とならない。

もっとも、訴訟当事者を害する目的で故意に虚偽の証言をした場合など特段の事情があれば、偽証もその当事者に対する不法行為となり得る。しかし、本件全証拠によっても、この特段の事情を認めるに足りない。

このほか、本訴損害賠償請求権が判決確定までは右偽証により侵害されたとはいえず、直ちにこれに対する精神的苦痛の慰藉料を請求することはできない。

そうであるから、その余の点について判断するまでもなく、控訴人の右主張は理由がない。

二  第二事件についてのまとめ

以上のとおり、控訴人の、被控訴人津田に対する不法行為に基づく請求は理由がない。

第三  結論

よって、控訴人の請求は一部理由があるから、控訴人の請求を全部棄却した原判決を変更し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官吉川義春 裁判官小田耕治 裁判官杉江佳治)

別紙<省略>

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